身分証明書がない、僕の人生?
身分証明書がない、僕の人生?

「タイ人なのに身分証明書もない、僕の人生、どうしてこんなに苦しまなければならないのだろうか?...」
正に、この世に存在しない人間の一人として生きていかなければならないのです。
バーツ君(本名サアート・プラチュムサーン)は現在21歳。彼はロッブリー県で生まれ、両親は貧しく、日雇いの働き口を求めて地方を転々として渡り歩く生活を余儀なくされていました。彼が10歳の時、両親は彼を親戚に預けたきり、その後の消息が不明となってしまいました。幼少の頃から転々とした生活で就学もできない状態で大きくなり、やがてストリートチルドレンの仲間入りをして麻薬を常用している時に逮捕され、少年鑑別所(バーンガルナー)に送られました。
そして、2004年に出所する時点で保護者探しをしても見つからず、鑑別所から「生き直しの学校」チュンポーン校に送られることになったのです。入所後、彼は皆と仲良くするように努力し、学校外教育課程で勉強し、今は中学課程を学んでいます。勤勉で真面目な性格の彼は、スポーツを好み、心身共に健全な青年に成長し、グループリーダーとして様々な活動に関っています
ところが、去る1月1日、思いもよらない出来事が起きてしまいました。彼は激しい腹痛に襲われ、スタッフのバイクで病院に連れられて行く途中、大型バスと衝突する事故に遭ってしまい、全身(特に肺の部分)を強打して緊急な手術を受けました。入院中に2回の手術を終え、やっと施設に戻って来たものの、病状が悪化し、こんどは腸の手術が必要になりました。
入院中に彼を見舞う両親や親類がいないばかりか、タイ人としての証しである身分証明書すらないのです。当然、彼は病院の治療費も実費負担となってしまうのです。さらに、学業を修了しても正式な卒業証書を発行されることもないのです。ですから、当財団では彼の将来のためにも両親の身元を捜し求めて、身分証明書を発行できるようにしていきたいと思っています。
また、当財団では、2007年から専属弁護士が担当して無国籍者事業をスタートし、タイ国内で生まれたものの、国籍が取得できなかったり、出生証明書もないままでいる子どもたちや人々に対して必要な書類が取得できるよう手助けしています。昨年は24人(内6人は「生き直しの学校」在籍)が出生証明書と身分証明書を取得することができました。
最終的な書類が取得できるまでには、保証人やDNA鑑定など様々な障害に直面していくわけですが、法的にその人の身分が認証された瞬間の喜びと人権の大切さを深く感じてしまいます。




