生まれ変わったナーンちゃん(本名:ピロムヤー・サッタータイ)

『痛いよ!…..怖いよ!….』と、静まり返った深夜、「生き直しの学校」カンチャナブリ校の寝室からうわ言が聞こえてきます。職員が慌てて駆けつけると、小柄なナーンちゃんが泣いているのでした。職員は何度怖い夢から目を覚ました彼女を強く抱きしめてきたことでしょう。
今から13年前、路上物乞いを補導中の警察官がナーンちゃん(当時6歳)と出会い、後に警察署からミンポーン先生・プラティープ先生が彼女の身柄を引き受けるようになりました。痩せて小柄で色黒、全身タバコの火で爛れ、その小さな顔は黒い目と強打によって骨が折れた鼻のナーンちゃんでした。 施設の環境に慣れてきた頃、ナーンちゃんが自分のことを語り始めました。「自分の他に大勢の子らがカンボジア国境の村から連れられてきて物乞いを強制させられ、一日に500バーツを稼がないと身体にタバコの火を押し付けられ、虐待されました。だから雨が酷くても、猛暑であろうが寒かろうが、必死になって誰彼となく、たとえ50サタン、25サタンのコインでも頂戴し、500バーツを稼がなければならなかったのです。すでに柔らかな皮膚はタバコの火で爛れて、とても痛く耐えるのも限界にきていました。また、病気で辛くて動けない日、ボスは容赦なく物乞いを強制しようとして鼻を目がけて打ったのでした。目が暗んで血が流れて泣き出したのですが、泣き止まないと殺すと脅されたので、止めはしたものの心では大泣きしていました。」
今日に至ってもナーンちゃんが決して忘れられない出来事とは、プラティープ先生がクロントイ港湾警察署にやって来て、彼女を温かく抱きしめてくれたことです。生れて初めて得た人の愛により、彼女の顔は微笑み、幸せを感じ、希望がわいてきたのです。これまでの苦い体験は過去の出来事となり、「生き直しの学校」カンチャナブリ校においてナーンちゃんは生まれ変わったのです。6歳で入所し、新たな生活を教職員や友だちと共におくり、近くの小学校に通学するようになりました。しかし、出生証明書もなく、国籍不明の彼女には「人権」も及ばない中、当財団では彼女が法的に認可されるまで奮闘し、やっとナーンちゃんは「一人の人間」になったのです。現在19歳の彼女は、バーンガオウィタヤー高校2年生として学びながら、数々の特技を活かしています。芸術的センスに優れ、仏教国タイで必要な『花輪』づくりでは県大会で優勝し表彰され、教職員や仲間たちから激励されたりしました。また、彼女は責任感も強く、思いやりがあり、年下の子たちからも慕われています。19歳ともなれば美貌容姿が気になってくる頃、時々彼女が鏡の前で鼻をじっと見つめ考え込んでいるところを教職員がみつけています。残酷なボスから虐待されてきた当時のことを思い出して悲しんでいる彼女を何とか励まそうと、ミンポーン先生とプラティープ先生が彼女の鼻の手術を勧め、去る4月30日、チュラロンコン病院で手術を行いました。
生まれ変わった彼女は、高校卒業後、ラーチャパット大学カンチャナブリ校の教職課程に進学し、「生き直しの学校」カンチャナブリ校の教師として子どもたちの指導に当たるのが夢なのです。 ナーンちゃんのケースは、当財団が取り組んでいる様々な活動の中のほんの一部に過ぎません。これからも当財団ではそれぞれの人が平等な社会で生きていくためにも慈悲のこころを灯し続けていくことに専念してまいりたいと存じます。




